リノベ判断の教科書
考え方

中古マンションでリノベを選んだ理由|「新築は2割下がる」は本当か

なぜ私が賃貸ではなくマンションを購入したのか、は以下の記事を参照ください。

考え方

賃貸ではなくマンションを購入した理由|資産性と撤退可能性で考える

なぜ賃貸ではなくマンションを購入したのか。「家賃には大家の利益が上乗せされている」「持ち家は資産になる」という説明を一次データで検証し、実際に効いてくる判断軸を整理します。

その上で、なぜ新築ではなく中古のマンションを購入してリノベをしたのか。

当時の私は、「新築マンションは鍵を開けた瞬間に2〜3割値下がりする」「建物の価値は築20年でゼロに近づく」「だから中古のほうが得だ」という、不動産業界でよく聞く説明を根拠にしていました。

ですが、あらためて一次情報を調べ直すと、これらの説明の多くは検証されていない俗説か、マンションには当てはまらない話でした。この記事では、その検証結果を踏まえたうえで、実際に中古マンション+リノベを選ぶ理由になる部分を整理し直します。

結論

  • 「新築マンションは鍵を開けた瞬間に2〜3割下がる」は、公的統計に裏付けのない業界の経験則
  • 「建物価値は築20年でゼロに近づく」は中古戸建ての査定慣行の話。マンションは近隣の成約事例で価格が決まる「事例比較方式」で査定される
  • 中古マンションの価格は築年数だけで決まらない。築25年を超えると下落幅はむしろ拡大し、非単調な動きも見られる
  • 「都市部で新築の選択肢が減っている」は主に首都圏の話。名古屋市では2025年の新築供給はむしろ増えている
  • 実際に中古を選んだ人が最も多く挙げる理由は「予算的に手頃だったから」(72.2%)

背景・前提整理

「新築は鍵を開けた瞬間に2〜3割下がる」の根拠を検証する

この話の出どころを調べると、不動産コンサルタントの沖有人氏(スタイルアクト代表)がダイヤモンド・オンライン(2016年8月4日)で指摘している内容にたどり着きます。それによると、この話は不動産業者の間で語られてきた経験則であり、根拠は「デベロッパーの粗利益が2割程度だから、中古になればその分が消えて原価に近づく」という想定にすぎず、検証された数字ではありません

新築マンションの値付け構造は、おおよそ次のような内訳とされています(販売価格を100とした場合)。

内訳 比率
土地代+建築費 約80
販売管理費(広告費・販売委託費) 約10
純利益 約10

出典:ダイヤモンド・オンライン「新築マンション『中古になったら2割下がる』は本当か?」(沖有人、2016年8月4日)

同記事は、この数字を実測しようとしても正確には測れない理由も指摘しています。新築の販売時期と竣工1年後の間には物件によって3年ほどの開きが出ることがあり、その間に相場自体が2〜3割動くこともあるため、下落分と相場変動分を分離できないのです。

実際、後述するとおり直近5年でマンション価格指数は42%上昇しています。仮に「2割下がる」構造があったとしても、相場の上昇に埋もれてしまう規模でしかありません。

「建物価値は20年でゼロ」はマンションの話ではない

「土地の価値は下がらないが、建物の価値は築20年前後でゼロに近づく」という説明も、不動産業界でよく聞く話です。ですが、これは中古戸建て住宅の査定慣行であり、国土交通省が2014年に問題視して改善指針を出した対象です。

国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」(平成26年3月31日公表)では、中古戸建て住宅について「個別の住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年で建物の市場価値をゼロとされる慣行」があり、中古住宅流通市場の活性化を阻害していると指摘されています。この指針を受けて、公益財団法人不動産流通推進センターの査定マニュアルも改訂されました。

そもそも、戸建てとマンションでは査定の手法自体が違います。

対象 一般的な査定手法
中古戸建て 土地と建物を分けて査定。建物部分は原価方式(新築時価格から築年数・グレードに応じて算出)
中古マンション 近隣の類似取引事例をもとに価格を比較する事例比較方式

出典:公益財団法人不動産流通推進センター「価格査定マニュアル」(全宅連掲載資料)

つまり、マンションの価格は「土地の価値+建物の残存価値」を積み上げて決まるのではなく、近隣の似た物件がいくらで成約したかで決まるのが実務です。「建物価値がゼロになるから安くなる」という説明は、マンションについては順序が逆になっています。

なお、鉄筋コンクリート造の住宅用建物の法定耐用年数は47年と定められていますが(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)、これは税務上、取得費を何年で経費化するかを定めた期間であり、建物の寿命でも市場価値でもありません。

実際に何が違うのか

立地・価格・管理状態といった条件は、買ったあとから自分で変えることはできません。一方、内装や設備の好みは、中古を買ってリノベーションすれば、あとから作ることができます。中古+リノベを選ぶというのは、動かせない条件を先に選び、動かせる部分は後から満たす、という順番の選択でもあります。 新築で好みに合う物件を待つ場合、その物件が出てくるのを待つしかありません。

構造や管理規約によって、リノベでも変えられない部分(躯体・配管の位置など)があるので、事前に把握しておくと後悔が減ります。

設計・施工

中古マンションにおけるリノベーションの制約とは?

リノベーションなら何でもできるわけではありません。中古マンションのリノベーションにおける建物上・管理規約上の制約と、失敗しないためのポイントを整理します。

俗説を除いたうえで、中古マンション+リノベを選ぶ実質的な理由になるのは、次の3点です。

価格は築年数だけで決まらない

東日本レインズの「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」(2024年公表分)を見ると、築年帯が上がるほど成約価格は下がっていきますが、その下がり方は一様ではありません。

築年帯別の平均成約価格(首都圏)

築5年以内7,808万円
築6〜10年7,156万円
築11〜15年6,619万円
築16〜20年5,972万円
築21〜25年5,320万円
築26〜30年3,835万円
築31〜35年2,455万円
築36〜40年2,742万円
築41年以上2,351万円

出典:東日本不動産流通機構の公表内容(三菱UFJ不動産販売「住まい1プラス」紹介記事より)

「築20年以降は横ばいになる」という説明はこのデータでは支持されません。むしろ築26〜30年にかけて下落幅が拡大しています。一方で、築31〜35年(2,455万円)より築36〜40年(2,742万円)のほうが高いという逆転も起きており、築年数だけで価格が決まるわけではないことが分かります。

首都圏全体では、2025年の中古マンション成約価格は平均5,200万円(前年比6.3%上昇、13年連続上昇)、成約物件の平均築年数は26.58年でした(東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」)。ただしこれは首都圏の平均であり、面積や立地の構成も年によって異なります。「築○年になると価値が△%になる」という数字を、自分が検討している個別の物件にそのまま当てはめることはできません。

こう考えると、値下がりすること自体は買う側にとって単なるコストではなく、取得条件そのものです。何年目に買うかによって、その先の下落幅は変わります。中古マンションを選ぶというのは、この下落カーブのどの位置で物件を取得するかを選ぶことでもあります。

選択肢の広さは地域による

「都市部は新築が少ないから、立地で選ぶなら中古のほうが選択肢が多い」という話も、地域によって前提が変わります。

首都圏では、新築マンションの発売戸数が減り続けています。

期間 発売戸数 備考
2025年(暦年) 21,962戸 前年比4.5%減、1973年以降の最少を更新
2025年度 21,659戸 前年比2.6%減、4年連続減少

出典:不動産経済研究所の公表内容(長谷工総合研究所レポートより)。ピークだった2000年の95,635戸と比べると、約4分の1以下に縮小しています。

一方、全国では2025年の発売戸数は59,940戸(前年比0.8%増、4年ぶりの増加)で、地域差があります。名古屋市に限ると、2025年の新築発売戸数は4,979戸(前年比11.2%増)と、主要5都市の中で最多でした。ただし、この増加は専有面積30㎡以下の小型住戸の構成比拡大が主因(前年1,438戸→2,003戸)で、ファミリー向けの選択肢がどれだけ増えたかまでは今回の調査で確認できていません。

出典:長谷工総合研究所「2025年 地方都市における分譲マンションの供給動向」

「都市部で新築が減っているから中古一択」という一般化は、少なくとも名古屋では単純には成り立ちません。 首都圏で立地重視の物件探しをしているなら中古が選択肢を広げてくれますが、名古屋であれば新築も含めて検討の余地があります。

管理状態は事前に確認できる

新築時にはどうなるか分からないことでも、中古マンションであれば購入前に確認できます。

中古マンションなら、清掃の行き届き具合・積立金の過不足・計画的な修繕の実施状況を事前に確認できることを示した図。

  • 清掃の行き届き具合
  • 修繕積立金の過不足
  • 修繕計画に基づいて大規模修繕が実施されているか

管理費や修繕積立金の滞納者が多いマンションは、管理組合の運営や修繕に支障をきたすおそれがあり、資産価値にも影響します。何を、どう確認するかは内覧チェックリストの記事で具体的に整理しています。

物件選び

中古マンション内覧チェックリスト|リノベ前提で「見るべき所だけ」分かる保存版

中古マンションをリノベ前提で買う人向けの内見チェックリスト。「①リノベが成立するか→②暮らせそうか」の2段階で、後から変えられない構造・設備の確認に絞って整理。当日の回り方・持ち物・聞くべき質問、印刷用チェックリスト付き。

実際に中古を選んだ人の理由

国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」では、中古の集合住宅を取得した世帯に対して、選んだ理由を複数回答で聞いています。

中古の集合住宅を選んだ理由(複数回答)

予算が手頃72.2%
新築にこだわらない42.2%
リフォーム済で綺麗34.5%
リフォームで快適33.2%
間取り・設備が気に入った25.9%
早く入居できる13.1%
地域に新築がなかった11.8%

出典:国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」

最も多い理由は「予算的に手頃だったから」で、「住みたい地域に新築がなかったから」は11.8%にとどまります。私の実感とも近く、「立地が理由で中古を選ぶ」人より「予算配分の結果として中古を選ぶ」人のほうが多いようです。

参考までに、新築を選んだ世帯が中古にしなかった理由も見ておくと、中古を選ぶ際の注意点がそのまま見えてきます。

新築を選び、中古にしなかった理由(複数回答)

新築の方が気持ち良い53.7%
隠れた不具合が心配27.4%
結局割高になりそう25.2%
配管等の老朽化が心配24.1%

出典:国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」

「隠れた不具合」「配管の老朽化」「結局割高になる」という懸念は、いずれも根拠のない話ではありません。中古を選ぶなら、この懸念にどう向き合うかが実質的な論点になります。リノベ費用の内訳は以下の記事で整理しています。

お金・ローン

リノベ費用の考え方まとめ|相場・内訳・ブレる理由を整理

リノベーションの費用はなぜ幅があって分かりにくいのか。断定するのではなく「なぜブレるのか」「どう考えれば振り回されないか」を整理します。

注意点・失敗しやすいポイント

「新築は2〜3割下がる」を断定する

公的統計に裏付けはなく、相場変動と分離して測定すること自体が難しい数字です。

「建物価値は20年でゼロ」をマンションに当てはめる

これは中古戸建ての査定慣行の話です。マンションは近隣の成約事例で価格が決まります。

築年数だけで物件の適正価格を判断する

築26〜30年にかけて下落幅が拡大する一方、築36〜40年帯で価格が上がるなど、非単調な動きがあります。

「都市部で新築が減っている」を全国一律の話として扱う

首都圏では明確に減少していますが、名古屋市では2025年の新築供給はむしろ増えています。

まとめ

中古マンション+リノベを選ぶ意味は、「新築より安く済ませる方法」ではなく、「立地・価格・築年数のどこで折り合いをつけ、浮いた予算をどこに配分するかを自分で決める方法」だと考えるほうが実態に近いです。

新築を選ばなかった人の懸念(隠れた不具合、配管の老朽化)は、中古を選ぶなら向き合う必要がある論点でもあります。内覧で何を確認すべきかは、以下の記事で具体的に整理しています。

物件選び

中古マンション内覧チェックリスト|リノベ前提で「見るべき所だけ」分かる保存版

中古マンションをリノベ前提で買う人向けの内見チェックリスト。「①リノベが成立するか→②暮らせそうか」の2段階で、後から変えられない構造・設備の確認に絞って整理。当日の回り方・持ち物・聞くべき質問、印刷用チェックリスト付き。

中古マンションでリノベを考えている方への参考となれば幸いです。